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2012.06.10 Sunday

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「本当に備忘録程度の走り書き」
2011.04.14 Thursday 19:28
ナンシー・クレス「アードマン連続体」
50年代SF傑作選にありそうな筆致。SF的な尖ったアイディアはないが、とても安定した丁寧な描写。

伊藤計劃「ハーモニー」
買いそびれていた遺作が手に入ったので読了。これと虐殺器官とMGS4ノベライズを合わせて読んで、伊藤計劃の抱えていた視点が朧気ながらつかめてきたような。テクノロジーの変化による自己の変容、肉体が自分に所属していないことに繋がる意識は背景を考えると納得できる。ただ虐殺器官とハーモニーだけだと相当視点が狭いので、新作で新境地が見たかった…叶わないけれど。

スタニスワフ・レム「泰平ヨンの航星日誌」
奇想詰め合わせにメタフィクションをトッピングしたような。

泉和良「セドナ、鎮まりてあれかし」
ぶっちゃけアンディー・メンテシリーズの作者であることを知っていなければ買っていなかっただろう。そういう意味で真っ当な読み方はしていないのでコメントは差し控える。地味だけど丁寧な話。テーマや描き方が賛否両論になるのは致し方ないかな。

大森望 編「ぼくの、マシン(ゼロ年代日本SFベスト集成〈S〉)」
表題作は持ってるんだけどなあ…と思いながら購入。もうちょっと日本人SF作家もチェックしようと思った。個別の作品へのコメントは略。

後はどうでもいいノウハウ本ばかりで最近真っ当に本を読んでないなあ……。
読書録 * comments(1) * -
「食わず嫌いはよくないな」
2010.04.17 Saturday 01:19
 正直に言うと日本人作家は今まであまりチェックしていなかったのです。それを後悔した。

 タイトル通りの死の集積に、高度情報化社会、テロリズム、グローバリゼーション、経済格差、社会言語学、哲学に心理学とあらゆる要素を織り込んで描かれる近未来社会。
SFとしての枠組みは「技術の進歩によってどのように認識/意識が変わるか?」という思考実験です。例えば脳科学に 数学的アプローチを経由して個人の意志決定問題に帰着させればグレッグ・イーガンですが、この作品ではその「仮定」となる領域が多岐にわたることが特徴です。戦場に投入される最先端のテクノロジーがいかにして兵士の状態を変え、制御し、そしてそれを支える技術の裏側にある労働力がいかにあるか。高度情報化社会の作り出す自由と不自由。少しの進歩がもたらす少しの変化が重なりあい、繋ぎ合わさって未だ見ぬ何か形成する有様を、現代に信じられているものを変容させる過程を描いています。これらの変化の描き方は層が厚くただのSF小説ではなく軍事・スパイ小説としても評価されているのも頷けます。
 しかし、この「技術の進歩によってどのように認識/意識が変わるか?」という思考実験そのものは、作品の主題ではありません。少なくとも個人の認識・意識に対してはそこまでつっこんだ話はありません。その変容し、歪さを抱える社会に囲まれた登場人物が「何を選択するか」という部分に、この物語は帰着します。そのたびたび浮かび上がる選択肢の問題と、その最後の選択によって、「虐殺器官」の社会を描ききったと言えるでしょう。
 正直テーマは重いし血まみれなので万人に勧められる本ではないですが、オールタイムベストに入ってもおかしくない作品です。SFとは関係なしに、重さが大丈夫な人には読んで欲しい本です。

そして後書きで訃報を知る。作品をもっと読みたい、というタイミングで訃報を知るのはジョージ・A・エフィンジャー以来だ。惜しい人を亡くした…。
読書録 * comments(0) * -
「正しく見るためには二度見よ。美しくみるためには一度しか見るな。」
2010.04.17 Saturday 00:43
――Henri Frédéric Amiel


久しぶりに本を買った。相も変わらずSFだが。船舶かぶれな身には珍しく、全員日本人だった。


ゼロ年代SF傑作選
一番最初に読んだ傑作選はジュディス・メリルの50年代SF傑作選で、他のSFを読み漁っていく段階で60,70,80,90と読んでいった。どうも目が肥えるのか期待のハードルを上げすぎたのか、時代が下るにつれてあまり好きな作品を見つけられなくなっていたのだけれども…久々に短編集をということで購入。以下各作品について。

「マルドゥック・スクランブル”104”」(冲方丁)
アクション中の寸劇が好き。こういう世界がマルドゥック市なんだという気がする。短編としては護衛対象の人物造形が、過去−現在−未来につながる形に手堅くまとまってていてさすがの筆力。

「アンジー・クレイマーにさよならを」(新城カズマ)
ボルヘスと古代ローマと女学生の混ざり合う雰囲気小説。色々実験的な部分はある気がするけれども、どうもちぐはぐな感じがして全体としての繋がりが見えなかった。あまり相性が良くないのかも…。

「エキストラ・ラウンド」(桜坂洋)
スラムオンラインは文体が合わなくて投げたけれどもこっちはOKだった。短編なのが良かったのかも。ネトゲにおけるオンとオフにおけるそれぞれの“日陰者”を描くのは面白いなあ。あとあり得ないとかファンタジーといわれようが、ああいう世界でRPを貫くことは可能で、それには結構パワーが必要なんですよ。個人的にはそれだけで評価がプラス。

「デイドリーム、鳥のように」(元長柾木)
よく分からない。あと童話のメタファー自体に納得できないのでいまいちのめり込めず。

「Atmosphere」(西島大介)
短い…。乾いた描写が狙ったのか紙面が足りなかったのか区別が付かない。もうちょっと書き込んで欲しかったなあ、というのが正直な所。

「アリスの心臓」(海猫沢めろん)
音の造形、微細な色、内側の領域の問答といった小道具は好み。しかし全体としてはちょっと散漫で雰囲気小説に近い気がする。タイポグラフィーはあまり必然性を感じない。導入したくなる理由は分からないでもないが、導入することでインパクトが生じたかと言われてもなあ、というところ。

「地には豊穣」(長谷敏司)
ナノウェアによる知性、経験/意識への介入に対する意志決定問題に文化と政治的問題をトッピングして濾したような話。ワンアイディアで二転三転させてつなげる展開は、ラストの美しさと相まって短編としての完成度が非常に高い。しかし投げっぱなしエンドでもある。

「おれはミサイル」(秋山瑞人)
戦闘機とミサイルのコミュニケーション。全く異なるアーキテクチャを持つ二種の交流は一期一会のファーストコンタクトものかもしれないし、空を移動する戦闘機たちの泥臭い有様はどことなく複葉機のレトロな時代を感じさせる。しかし、会敵と空戦がこのコンタクトは基本的に一期一会のものにする。不思議な読後感。

全部読んでみて思ったのは、意外と00年代SFの空気が好きだったってことだ。どうも90年代は、虚構がリアル感を全面に押し出して鼻についたのだが00年代以降はあまりそういうのが無くなったように思う。ちょうど仮想現実(Virtual Reality)の代わりに複合現実(Augumented Reality)が出てきた時期とも一致するのか、技術によってもたらされる領域が現実と地続きであることを受け入れるような空気がある、と思う。今後十年、それさえも当たり前になった10年代の作品が出てくるのかと思うと今から期待が高まる。
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「実は最近の記録ではない」
2009.04.11 Saturday 22:58
ヴィクトル・ペレーヴィン「眠れ」が図書館にあるはずなのに、どれだけ探しても見つからないという悲しみ…取り寄せた方が早いのは明らかとはいえ。

スタニスワフ・レム
「完全な真空」の概略
「全部書くのは面倒なので骨格(の写像)を書評としてだけ書いておきました。一部明らかに実現不可能なものがあるけれど気にするな」
書評という形でしか書けない不可能小説(ある意味一発ネタ)と、展開可能な長編の萌芽が混在しているという意味では玉石混淆。いつものレム節。もっとネタかと思いきや、レムのユーモアは捻りすぎて上滑りするものが多い印象…。
「虚数」の概略
「捻りすぎたユーモア群。知能(『エルンティク』)、芸術(『ネクロビア』)、未来(『ヴェストラント・エクスプロペディア』)、知性(『ビット文学の歴史』、『GOLEM』)について、それぞれの序文と断片。 ※ただしこの分類は恣意的なもの」
風刺というのはある意味で真実なので、図星を付かれて微妙な気分になるのは当たり前かもしれない。GOLEMの語り口を露悪的ととるかで、レムが人類に対して容赦がないと取るかの違い。しかしそこら辺も考慮に入れて構成されている可能性もぬぐえない。

岡谷公二「郵便配達夫シュヴァルの理想宮」
学術的には異端の色物建築ではあるけれども、何らかのエネルギーを秘めた建築であることは間違いない(なぜなら今まで残っているのだから)。今度フランスに行くことがあったら寄りたいと思うぐらいには変な建物。

日本建築学会環境系論文(2009年vol3,4)
知的生産性の研究が、単にデータを集めて解析してるだけのような。調査形式が固定しているから仕方ないのかなあ。しかし100升計算でしか人間の知的生産性は計れないのかしら?
地下鉄の避難経路の到達実験が一番面白かったな。人間は見落としたり標識を読み間違える生き物だから。


よみかけ
L.B.アルベルティ、相川 浩(訳)「建築論」
全章を読み通す予定はあまりない。建築の要素を多岐にわたって解説。ウィトルウィウスの建築十書をなぞった十書(章)からなる。あまりにも基礎的過ぎて最近の建築家が言わないことを列挙することから始まり、当時要求される技術にも言及。あのフランクなんだか格調高いんだかよく分からない文体(二人称の呼びかけと、翻訳調文体への耐性がないと読みにくい)さえなければ、建築初学者向けと言えなくもない。ただ現在にはそぐわない概念もいくつかあるので、それは考えどころ。あの時代の建築らしく、非常にヒューマンスケールな考え方が展開されている。

ウラジミール・ナボコフ「ロシア文学講座」
ものすごい斜め読み。題材としているロシア文学群をまともに読み通したことはないので、多分これも読み通すことはない。作家として/読者としての視点の取り方は興味深い。序文は読み物としても普通に面白い。


薔薇の名前と文学賞滅多切りとボルヘスとナボコフと時代小説とSFが読みたい…。
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「久しぶりに読んだ本など」
2009.02.05 Thursday 00:41
相変わらずSF。
そういえば、カート・ヴォガネットが2008年にお亡くなりになっていたことを最近知りました。やたら著作が並んでいたのは追悼企画でもやった後だったからなのかもしれない。
しかし、近くの本屋のSF関連本の回転の悪さは以上。八割ぐらい二ヶ月前から品揃えが変わっていなかった…おかしいだろどう考えても。

「宇宙創生ロボットの旅」スタニスワフ・レム
すてきな宇宙ほら吹き。ユーモラスで楽しい、その下を深読みしてもなお楽しい。

「宇宙飛行士ピルクス物語(上・下)」スタニスワフ・レム
システム全体としての不備を解き明かすサイバネティクスな話。具体的には不思議な出来事があっても、最終的には「幽霊の正体見たり枯れ尾花」と言わんばかりの短編集。幾らでもSF的に展開できそうな出来事を、「仕様ミス」「誤認」「誤作動」で切って捨てる論理が非常に現実的だ。自分自身(=人間)が作ったものに理解できないものがない、という感性は最近の科学の主流なパラダイムではないけれども(ニューロンとか自己組織化とかが台頭してきた気がするし)しかし、現在の工学系には非常によく即していると思う。
#ところで、もうサイバネティスクスという単語は死語なんだろうか…。確かに最近聴かない。

「ディファレンス・エンジン」 ウィリアム・ギブスン&ブルース・スターリング
スターリングはスキズマトリックスとか嫌いじゃないんだけどなー…ギブスン節は相変わらず読むの辛い。産業革命前後イギリスの基礎知識があればもっと楽しめたんだろうけれども。
虚実入り交じる架空のイギリスといえばキム・ニューマンのドラキュラ紀元シリーズを思い出す。

「太陽の中の太陽」
ラピュタ+スチームボーイ+α。ものすごく原始的な方法ではあるが、ジェットエンジンを動力にしたバイクで空を飛ぶのはロマンだと思う。どうも主人公の名前のせいで、某SW新三部作の主演俳優の顔が頭から離れない…立ち位置的にやさぐれた青年だし合うと思う。実写化するときは是非お願いします。
しかしあのラストはない。投げっぱなしすぎる。と思ったら三部作の一作目らしい。大風呂敷をちゃんとたたんでいること(あと翻訳されること)を祈ろう。

「プリズム」「小指の先の天使」「ライトジーンの遺産」 神林長平
個人的にはライトジーンが一番面白かった。連作短編の名にふさわしい。プリズムは、現実を変容するエピソードが互いの短編にリンクしすぎていて結果としてちょっと散漫な感じがした。短編集としては小指の先の天使の方が、一つ一つがまとまっている分、全体のゆるい繋がりを想像する余地があって好き。
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「禁断症状にかられて」
2008.03.06 Thursday 22:21
久しぶりに本を買った。最近無くなってたSF分が補充できて嬉しい。何となく最近のラノベももう一回手を出してみたくなったが、シリーズ物が多すぎてよく分からず。真面目な本は図書館で探すとしよう。
しかし荒山徹が十兵衛両断しかないとは…あれはやっぱり売れ残っている部類なのだろうか。

「小指の先の天使」神林長平
自己と外部のコミュニケーション。実在と虚構。そんな感じのいつもの神林節でした。仮想世界ネタとしては本当にいつも通り……なんて言うかそれ以外に言いようがない。仮想現実(Virtual/Simulated)ネタで印象に残っているのはユービック(PKD)としあわせの理由(グレッグ・イーガン)ですが、本当に語りたい主眼を何処に置くかで状況としては変わらないはずの仮想現実も随分変わる物だなあという印象。肉体に依存しないという意味では、「なんと清浄な街」の第二世代も「ボーダー・ガード」の宝石も代わりはしないが、しかし描かれる世界はずいぶんと違う。

「時砂の王」小川一水
時間遡行についての整合性は「納得できればいい」位であまり気にしないことに。そうすると、生じる分岐を全て分岐として丸投げにしている本作は割とイメージが取っつきやすいと思った。分岐を生じさせるメタ分岐とかまで考えると「無限の暗殺者」(グレッグ・イーガン)、だしこの話としては蛇足。「老ヴォールの惑星」の時も少し思ったけれど小川一水の主眼はSF理論やその発展系ではないと思う。SF的世界観の中で変わらず貫かれる人間性(あるいはそこで、最後まで残る人間性とは何か)。
構成上、いくらでも展開を引き延ばせそうではあるんですが骨子がシンプルで、そのなかで主人公の払う犠牲、葛藤、決意なんかが判りやすい。その犠牲の上の覚悟があるからこそ、ヒロイックに見え、よけいなシーンが削られているからドラマ的に見える(シーン制TRPGのようだ)。TRPG脳で読むとその葛藤の構造を丸移ししてシナリオ一本組めそうなぐらい格好いい。どうしても無限に分岐する時空間=マルチバース構想が出てくるのでTORGに絡めたくなるが。

「ようこそ女たちの王国へ」ウェン・スペンサー
リアル姉妹には萌えないという話?
西部開拓時代+ロマンス+ジェンダーSF(社会派)。
『ギャルゲーのような表紙だが良い意味で裏切られた』とか、割と好意的な書評が多かったので期待しすぎたかもしれない。ちょっと肩すかしを食らった間は否めないが、キャラが立っているのですんなり読める。
読み終わったので追加分。リアル姉妹には萌えないけど義妹っていいよねというハーレムエンドでした。もうちょっと風刺を効かせると思っていただけに意外でした。基幹設定に対するSFさが足りない気は否めないのですが、これはこれでロマンス物としては有りかと。

「虎よ!虎よ!」アルフレッド・ベスター
モンテ・クリスト伯を下敷きにした豪華絢爛なワイドスクリーン・バロック。
50年経っても色褪せない(そして癖のある)SFオールタイムベスト(だが絶版)。
というのが予備知識。再版されていた時に「今買わないとまた手に入らなくなる」という思いで即座に購入した。
正直自分に合うかどうかは不安ではあったのだがそんな心配は不要だった。
強烈な個性と非情なまでのキャラクターの動かし方、過剰な演出が渦巻いて素晴らしい。このベースアイディアだけを抜き出しても話が一本書けるのに、脇役やサブアイディアを惜しげもなく投入して使い捨てている。
あと、オルタナ系アメコミ臭がすごい。(スーパーマンなどのライターをしていたのだから当たり前かもしれないが)パンチの効いた畳み掛けるような文体、タイポグラフィなどの実験的作風、急展開していくストーリー…すごく……アメコミっぽいです。描写も脳内でアメコミ風コマ割が展開されていた。まあこの話しを映像化すると陳腐になって面白くないとは思うので、あくまで脳内での話。
最後の落としが微妙に肩透かしなのも含めてアメコミっぽい。落としどころとしてはアレしかないのは判っているし、途中の加速+大風呂敷に盛大に酔えたので十分元はとった。
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「ディテールを愛撫せよ」
2007.10.22 Monday 21:45
とV・ナボコフが大学の講演で語ったとか何とか。「青白い炎」を読み通すのが今の読解力では困難なので、肩慣らしに短編集Iを読んだ。読み終えた感想としては確かに、短編どころか一シーンを切り取った長さの掌編もあるのに話が重い。これは読解力の低下なのか、ナボコフの一シーンの描写がやたら重いのか。確実に前者だろうけれど。

驚異の発明家(エンヂニア)の形見函 - アレン・カーズワイル
現代に残された形見函に納められた十の品を軸に語られる、十八世紀の虚実入り交じる発明家の一代記。
この時代科学は博物学(色々なものを系統だけて名前を付ける)全盛期なので、今の科学とは大分違う感じ。それを胡乱と感じてしまうのはアレかもしれないけれど、その独特の胡散臭さが話のテイストなのだろうと思う。ミステリで言うなら叙述トリック系。普通に面白かった。

ル・コルビジェとはだれか - 磯崎新
サヴォア邸のトレスが進まないので気晴らしに。磯崎新は前にGAか何かで学術的論文的な文章を読んで死にそうになったが、軽い読み物だとさすがに文体がこなれて大分読みやすい。新潮での連載(まだ続いているのだろうか?)も読みたいなあ。
コルビジェの建築は数学・幾何的な原典(ルネッサンス、古代ギリシャ建築に対する情熱)を持っている、と考えるとその建物を「豆腐のような」という一言で切って捨てる訳にもいかない。反省します。
戦後日本の建築家が近代建築の背後にある精神性をどう咀嚼していくかにも触れていた下りが面白かった。
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「Engraved」
2007.03.05 Monday 20:30
オフ会については略。読書録および映画感想のみ。

ナンシー・A・コリンズ「フォーリング・エンジェル」「ブラック・ローズ」
エログロバイオレンス女吸血鬼ソーニャ・ブルー物二種。

フォーリング〜は三部作の最後で、中編を読んでいなかったので脳内保管しながら読んだ。アクションや話の筋はコリンズ節全開の、映像的な話だった。質は普通。

ブラック〜はTRPG World of DarknessシリーズのVampire: The Masqueradeとのクロスオーバー物。正直言ってWoDの耽美でけれん味に満ちた雰囲気と、ソーニャ・ブルーシリーズのエログロバイオレンスはあんまり食い合わせが良いとはいえない気がする。現実に遊んだらあんなにアクション出来ないだろう。V:tMは活劇よりむしろ交渉術の方が重視されるゲームだと思うん訳が、そこら辺は無駄にハリウッド的だなあ(火薬的な意味で)
単にV:tMの氏族設定を使っただけのように見えてしまった。血の魔術の描写は割とらしくて好きだけれど。

デヴィッド・ジンデル「ありえざる都市 1」
遠未来を舞台にして、移相空間を飛びながら星々を旅する《パイロット》となった少年の冒険物。数学の話はかなり流しているのだが幾何の話をしているらしい。解説にあったが、中世ギルドになぞらえた職能主義を「新しい太陽の書(ジーン・ウルフ)」や「逆転世界(クリストファー・プリースト)」と比べるには一人称が強すぎる気がする。三部作の最初なので判断は保留する。

ゴーストライダー
B級のBは微妙のB。予想通りでした。最近吸血鬼物ばかり読んでいたから色々混ざる。
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「新春さわやか読書録verup〜AMAZONにも繋げたよ編」
2007.01.04 Thursday 10:45
老ヴォールの惑星老ヴォールの惑星 小川 一水
内容(「BOOK」データベースより) - 偵察機の墜落により、おれは惑星パラーザの海に着水した。だが、救援要請は徒労に終わる。陸地を持たず、夜が訪れない表面積8億平方キロの海原で、自らの位置を特定する術はなかったのだ―通信機の対話だけを頼りに、無人の海を生き抜いた男の生涯「漂った男」、ホット・ジュピターに暮らす特異な知性体の生態を描き、SFマガジン読者賞を受賞した表題作ほか、環境と主体の相克を描破した4篇を収録。著者初の作品集。

書店で見つけたのはシリーズ物ばかりで、日本人ということもあり尻込みしていたのですが短編集で様子を見ようと思って読んだ。一言で言うと『骨太でアクは少なめ』。アクが少ないのを予定調和と取るか、骨太なのを人間賛歌と取るかは読み手次第になるかと。短篇は、奇想一本槍よりも地に足が着いていてバランスはいいかと思います。個々の短篇がそれぞれちゃんと独立しているからか、「環境と主体の関係」というテーマの変奏曲は言われるまで気付きませんでした。
◆以下勝手な感想
「ギャルナフカの迷宮」
筒井康隆系の理不尽路線と思いきやハートフル(ユートピア)路線。予感が外れた。
「老ヴォールの惑星」
なんかディアスポラ(グレッグ・イーガン)でガンマ線バーストをどうにかしようと頑張ってた人みたいだ。
「幸せになる箱庭」
パンチが一番弱い。箱庭物は、正直もうちょっとひねりが欲しかったなあ。
「漂った男」
状況設定はちょっと都合が良すぎるけれども、オチ含め会話は素晴らしい。


砂漠の惑星砂漠の惑星(原題:無敵号) スタニスワフ レム
内容(「BOOK」データベースより) - 6年前に消息をたった宇宙巡洋艦コンドル号捜索のため“砂漠の惑星”に降り立った無敵号が発見したのは、無残に傾きそそりたつ変わり果てた船体だった。生存者なし。攻撃を受けた形跡はなく、防御機能もそのまま残され、ただ船内だけが驚くべき混乱状態にあった。果てなく続く風紋、死と荒廃の風の吹き抜ける奇怪な“都市”、貞察機を襲う“黒雲”、そして金属の“植物”…探検隊はこの謎に満ちた異星の探査を続けるが。

『怪異』の正体が、登場人物の罹災から明らかになりますが、その「怪異」がそれ以前で示された手掛かりに反転した意味を与えることになります。その反転前後の圧迫感は素晴らしい(ホラーにも近いかも)。手掛かりから結論へ至るにはSF的飛躍があるので、自力で辿り着くのはかなり難しい(というか無理な気が)ですが、その「謎解きの開放感」はミステリ的とも言えるかもしれません。レムは初めて読んだけれど、前評判に違わずでした。コードウェイナーにも通じる非人間的思考を再現する所とか、現代社会への皮肉にも取れるところとか。
次はソラリスか…な?

「ボルヘス・ナボコフ」 筑摩世界文学体系81
ルイス・ボルヘスとウラジミール・ナボコフ。読みかけ。華麗? 悪筆? いいえ、相変わらずメタフィクションなのです。大好き。
「円環の廃墟」…何処かで読んだことがあると思ったら創元SF文庫・ジュディス・メリル編「SF傑作選」"Judith Merril The 11th Annual of the Year's Best SF" に入っていた。道理で。
多分書き足す。
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「regretful summer」
2006.10.12 Thursday 23:54
もはや夏ではない。秋も半ばなのか…。
結局夏の間に何も読めなかったなあ。数年前の「読みたい物リスト」を見たら、今と全然変わって無くて笑った。文学作品を読まなくてはと思いながら全く読んでないあたりも。

「過負荷都市」神林長平
 カフカを意識しているかどうかは知らない。しかし「起きたら甲虫じみた装甲(アーマロイド)の中にいて脱げなかった」は変身のオマージュなんだろう。現実を改変するスプレー缶はやはり「ユービック」(P.K.ディック)を思い起こさせる。「完璧な涙」に出てきたエリクサーも。

「ビーナス・プラス・エックス」セオドア・スタージョン
 ジェンダー/ユートピアSF。異なる星に転送された男がユートピアに出会い、一方一般的なアメリカ社会のあり方が並行して描かれる。途中で合流してどんでん返しになるのかと思いきや、全く重ならなかったので逆に驚く。テーマ(性差)やイメージ(情景)のレベルでは繋がっているのだけれど。
 こういうのを題材にしてジェンダーものの小論文を書くことも出来なくはないのだろう。というか「ケルベロス第五の首」(G.ウルフ)を題材にして自己同一性についての話を書くよりは論点を纏めやすそう。あれは相当取り留めもない文章だった。
 アブダクションと見せかけて実は。この最後の落としがどのレベルで来るかで、話のテイストも随分変わると思う。早すぎず(そうするとエピローグが長く湿っぽくなりがち)遅すぎず(そうすると最後で投げっぱなしになる)、割と好みな位置。

「スターメイカー」オラフ・ステープルドン
 超スケールの宇宙史。造物主(スターメイカー)に対する思弁をSF(と疑似科学)の手を借りて語っているような印象。
 全体的に硬く澄んだ文章。西洋哲学の香気がきつくて好みではないが作者が哲学者でもあるので、それは当然かも。1935年刊行なのに、既にビッグバンを起点とした宇宙の体系を(科学的考証はともかく)構築していたというのは見事の一言に尽きる。中盤からSFとしてのエンターテイメント性(楽しい嘘)をかなぐり捨て、哲学に近い世界の有り様を叩き付けてくる。流石に哲学者兼作家なだけあり、その描写のぶれのなさ、論理性には脱帽する。《無窮》という概念は通常のSFの(人間視点の)記述では殆ど描けないから、人間の視点が切り捨られたこの書き方しかないのかもしれない。
 前半の“楽しい嘘”ではは精神だけで宇宙を飛翔する男の魂が数多の世界を巡り、その中の様々な“人類”についてを記述する。異なる星の成り立ちを由来にする感覚や認識の違いといった、科学的嘘(Science Fiction)が楽しい。
 後半は、精神性を高めて進化していった一部の人類の話。インフレするユートピアと止揚を続ける精神世界。この辺りで私の想像力がユートピアの質的インフレに付いて行けず紙面をなぞるだけ。とはいえ、語り手自身がこの時点で既にユートピアの細部を「現段階の人類」には理解不能な領域と言い切って切り捨てるのだが、それは致し方ないと思う。作者には朧気ながらそのユートピアが見えているのでしょうか。
(想像できないものは書くことができない。そういう意味でSFの限界も暗喩しているのか? しかし訳がわからないものを「訳がわからない」ままに描写することは不可能ではないはず。)

 スターメイカーで語られた一面(ユートピア社会の進出)を、正統派のSFとして語るならが「ディアスポラ」グレッグ・イーガンになるのだろう(「ディアスポラ」の描写密度で、スターメイカーで触れられていること全てをを書ききることは不可能だが)。

 ドラマではなく宇宙史。人間レベルのドラマは無い。他の話(「最初にして最後の人類」「オッド・ジョン」「シリウス」)もこんなノリなのだろうか。

その他:「スキャナー・ダークリー」(もしくは「暗闇のスキャナー」) P.K.Dが映画公開
映像は実写フィルムをトレースしてアニメ化したという凝ったもの。PKDは電気羊とユービック、高い城の男、ニックとグリマング、短編のごく一部しか読んでないけど気になるー。インディペンデントなので日本では劇場公開するか不明ですが、DVDでも来てほしいものです。
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